市立図書館とホットサンド

市立図書館のハムチーズホットサンドが恋しい。

 

トゥルクの市立図書館にはカフェ併設されている。

 

入り口は二つあるのだが、私はいつも、

新聞コーナーの付近の入り口を通って店内に入った。

 

縦長の店内からは中庭が見えるようになっていて

時々、演奏している人がいた。

 

四人がけのテーブルがほとんどで、

一人で座るのにはもったいない気がしたのだが、

店内は空いていることがほとんどだったので、そんな気持ちもいつの間にか無くなっていた。

 

空腹を我慢できるところまで図書館で時間を潰した後、

そのカフェに行くのが好きだった。

決まって、ハムチーズホットサンドを注文した。

 

材料は食パン、ハム、チーズのみ。

焼きあとの縦線9本がくっきり残っていた。

斜めにスライスしたホットサンドを

正方形のまま、白色の丸皿に乗せて運んできてくれた。

角ははみ出そうではみ出ない。

ナプキンは必ず、鮮やかな黄緑色だった。

 

どこか懐かしい味だった。

 

食べ終わるころには お腹も心もいっぱいで、

一つで十分だった。

 

フィンランドでは、たくさんの美味しいものを食べたけど、

それでも私は、市立図書館のハムチーズホットサンドが恋しい。

 

🥕

 

 

 

ヘルシンキのはずれにあるあたたかいカフェ

 

Cafe Scallion はヘルシンキの中心部から離れたところにある。

 

午後三時を過ぎると、街は急に冷える。

トイレは見つからないと心得ていたはずだったが

散策していた時、お腹が痛くなった。

そんな時、トイレ目当てで扉を開けたのがCafe Scallion だった。

 

そのカフェはトルコ人の男性とリトアニア人の女性が営んでいた。

オープンしてから1ヶ月もたっていなかったらしい。

私が日本人初のお客さんだったらしい。

おじさんは、どのくらい日本が好きか、を楽しそう話してくれた。

 

注文したケーキセットを食べ終え、帰ろうとした私に、

サーモンスープ食べる?とおじさんが聞いてきた。

もうすぐ閉店だけど、残っているから、と。

おじさんと横並びに座って食べた。

 

その日から、Cafe Scallion を訪れるようになった。

 

フィンランドの秋は暗い、悲しい、冷たい。

一人でいたいけど、誰かと話したいとき、私は、そこを訪れた。

おじさんはいつだって私を出迎えてくれたし、

女の人だって、ミルクと砂糖は必要ないことを覚えていてくれた。

 

 

 

 

Cafe Art とアウラ川

Cafe Art はアウラ川沿いに入り口を構える、大きめなカフェだ。

はじめて訪れたのは、太陽もなければ、雪が降るのにはまだ早い11月だった。

友達のことを店の前で待ちながら、お世辞でも綺麗とは言えない川を眺めていた。

 

店の中に入ると、パンやケーキが並ぶショーケースが出迎えてくれた。

それだけで、温かい気持ちになった。

 

注文したものを受け取って、

カウンターの奥にある手前から二番目の部屋に入った。

窓側の席に座った。

 

窓から見たアウラ川は、さっき見たものとは異なっていて、不思議な感覚になった。

 

その後、何度もCafe Art に足を運んだ。

 

何度訪れても、入り口の目の前で見るアウラ川と、席に座ってみるアウラ川は、同じものとして捉えることができなかった。